オムライス 復刻版(2010年12月)
2020.03.21 Saturday
私の父は住み込みの仕立て職人で、そこへ裁縫を習いに来ていた母と結婚した。
戦後間もない頃だった。
やがて独立した後、仕立て屋の一人息子として生まれた私は父母の愛情にだけは恵まれた。
当時、どこでもそうだった様に、当然我が家も貧乏で、私は常に親の懐具合を気にする子供だった。
そんな私を、母はごくまれに梅田のデパートへ連れて行ってくれた。屋上の乗り物で遊んだ後、
レストランでの昼食がお決まりで、私は常に「オムライスが食べたいっ!」と叫んでいた。
子供心に色が鮮やかで、それ以上にプライスが安かったからだが、本当はフォークとナイフを
使った洋食に憧れた。でも、それを口に出したことはなかった。母を困らせる気がしたからだ。
母は私を育てる為だけに生きたような人だった。私の幸せ以外、何も望まなかった。
今でもオムライスを見ると亡くなった母を思い出す。当時はオムライス「で」いいやと思っていたが、
今では素直にオムライス「が」いいと思えるようになった。
母親にベタベタする男はマザコンと呼ばれる。違うのだ。母親は男にとって最後の逃げ込み場所
なのだ。人生に行き詰って本当の本当に困ったとき、人目を避けて男は叫ぶのだ。
「お母ちゃーんっ!」と。
私の好きな唄 You tube で 「あいうた 上間綾乃」で検索して、ぜひお聴きください。
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